piano-treeの日記

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コンサル会社の広告界への参入」が日本で意味すること

アドバタイムスのコラムを更新しました。以下、引用です。

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コンサルティング会社の広告界参入が大きな話題です。米国に端を発した世界規模の合従連衡がダイナミックに進行中ですが、これは日本においては、米国にはない特別な意味を持つ出来事です。そして事態の趨勢を左右するのは、コンサル会社でも広告会社でもなく、ほかならぬ広告主のマインドセットです。本稿では、コンサル会社の広告界への参入が「日本で」意味すること。そして広告主に必要なマインドセット。この2つのポイントを掘り下げます。

コンサルティングという業態は、19世紀後半のアメリカで産声を上げました。世界最古のコンサルティング会社は、マサチューセッツ工科大学の科学者によって設立されたそうですが、有名なマッキンゼーも創設者はシカゴ大学経営学部の教授だそうです。アメリカの同僚と仕事をしたり、話しをしていると、アメリカは日本に比べて、随分と学歴社会だな、と感じます。

例えば米アマゾンのofficers and directors(取締役・執行役員)のページでexecutive(重役)のプロフィールを見てみると、ハーバード、カーネギーメロン、スタンフォードなど名だたる名門大学のMBAホルダーが顔を揃えています。日本でライバルにあたるインターネット企業の役員プロフィールを見ると、やはり錚々たる顔ぶれではありますが、国際的なレベルでの高学歴が共通項というわけではありません。

広く読まれているビジネス書を見ても、アメリカでは『ビジョナリー・カンパニー(原題:Build To Last)』のジム・コリンズや、『イノベーションのジレンマ(原題:The Innovators Dilemma)』のクレイトン・クリステンセンをはじめとした学者・研究者による良書が多いですが、日本では実績のある経営者の手記や、第三者による分析のようなものが人気です。

内容的にも、例えば『ビジョナリー・カンパニー』は膨大な数の企業を定量的に比較・検討し、何が「永続する企業の条件」なのかを統計的かつ客観的に分析しているのに対して、経営者の手記・分析のような日本のビジネス書では通常1社(多くて2〜3社)の成功事例・失敗事例を深堀りしています。

どちらが良い・悪い、ということではないですが、日本では実際の成功体験が、科学的・学術的・体系的な知識より重んじられる、ということがこの2つの例に表れているように思われます。学者や研究者の言説は、時に「机上の空論」と揶揄すらされます。本稿の結論を一部先取りすると、日本で独自の進化を遂げた広告会社はここでいう「実際の成功体験」重視型、アメリカで生まれ育ったコンサルという業態は「科学的・学術的・体系的な知識」重視型で、それゆえ本邦においては、学者や研究者に対するのと同様、まだまだコンサル会社をイメージ的に敬遠する人も多いのではないでしょうか。

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